私たちの身近な果物であるいちご(苺/strawberry/ストロベリー)は、どのような仕組みで生産され、市場を通じて流通しているのでしょうか。いちごは見た目や味だけでなく、市場規模や流通構造の面でも特徴的な果物です。
本記事では、いちごの市場規模と流通の全体像を、生産現場から価格の仕組み、今後の動向までわかりやすく解説します。日本のいちごが届くまでの流れを、ぜひ最後までご覧ください。
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1. いちご市場はなぜ注目され続けているのか

いちごは、日本の果物市場の中でも特に高い認知度と人気を誇る品目のひとつです。赤く艶のある見た目や甘酸っぱい味わいは、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれ、日常の果物としてだけでなく、特別な日の食卓を彩る存在としても定着しています。家庭用・業務用・贈答用と用途が多岐にわたることから、いちごは単なる季節果実にとどまらず、安定した市場規模を維持してきました。その背景には、生産や流通の工夫、そして消費者意識の変化があります。
日本の果物市場におけるいちごの立ち位置
いちごは、果物全体の消費量が伸び悩む中にあっても、比較的安定した需要を保っている品目です。その理由のひとつが、消費シーンの多さにあります。家庭ではデザートや間食として楽しまれ、外食産業や製菓業界では年間を通じて使用されます。さらに、ギフト需要やイベント需要にも強く、特定の時期には取引が活発化します。こうした複数の市場に支えられていることが、いちごを果物市場の中でも特別な存在にしています。
季節果実でありながら安定需要を持つ理由
いちごは本来、冬から春にかけて出回る果物ですが、現在では施設栽培の普及により出荷期間が長期化しています。これにより流通量の急激な変動が抑えられ、卸売市場や量販店でも安定した供給が可能となりました。また、クリスマスやひな祭り、バレンタインなど、需要が集中する時期が明確である点も特徴です。需要のピークが予測しやすいことは、流通計画や価格形成の面でも大きな強みとなっています。
消費者ニーズの変化と市場規模への影響
近年のいちご市場では、価格だけでなく「品質」や「価値」を重視する消費者が増えています。品種名や産地、栽培方法に注目し、自分に合ったいちごを選ぶ動きが広がっています。その結果、高品質ないちごは安定して支持され、市場全体の取引金額を押し上げる要因となっています。こうした消費者意識の変化は、いちご市場の規模や流通のあり方そのものに影響を与え続けています。
2. 日本のいちご市場規模の全体像

日本のいちご市場は、果物全体の中でも安定した規模を維持してきた分野のひとつです。果物消費が全体として変化する中でも、いちごは家庭用・業務用・贈答用と幅広い需要に支えられ、一定の存在感を保っています。とくに生鮮果実の中では、季節性がありながらも需要の山が読みやすく、流通や販売計画を立てやすい点が特徴です。市場規模を考える際には、単純な生産量や流通量だけでなく、取引金額や消費シーンの多様さ、価格帯の広がりといった要素を総合的に見ることが欠かせません。ここでは、日本のいちご市場を俯瞰し、その全体像を整理していきます。
いちご市場規模の特徴と果物市場での位置づけ
いちごは、重量ベースでは他の果物より少ない場合があっても、取引金額では上位に位置することが多い品目です。その理由は、1パックあたりの単価が比較的高く、品質や用途によって価格差が生じやすい点にあります。特に冬から春にかけては需要が集中し、卸売市場や小売店での取扱量・取扱額が増加します。さらに、外食産業や製菓業界など業務用需要も一定数存在するため、家庭消費の動向だけに左右されにくい構造になっています。こうした複数の需要層に支えられている点が、いちご市場の安定性を高めています。量よりも「価値」で市場を形成している点が、日本のいちご市場の大きな特徴と言えるでしょう。
年度・天候・栽培環境が市場規模に与える影響
いちご市場の規模は、毎年大きく変動するわけではありませんが、天候や栽培条件の影響を受けて細かな変化を見せます。日照時間や気温の推移は収量や品質に直結し、結果として市場価格や流通量に影響を及ぼします。ただし、いちごは施設栽培が主流であるため、他の露地果実と比べると気象リスクを一定程度抑えやすい作物でもあります。また、栽培管理技術の進歩により、収量のばらつきを抑える工夫も進められています。加えて、全国に主要産地が分散しているため、特定地域の不作が市場全体に深刻な影響を与えにくい構造になっています。この産地分散型の生産体制と施設栽培の組み合わせが、いちご市場規模の安定を支えています。
取引金額から見えるいちご市場の広がり
近年のいちご市場では、流通量以上に取引金額の動きが注目されています。高品質・高付加価値ないちごの流通が増え、家庭用の手頃な商品から贈答向けの高価格帯まで、幅広い価格層が形成されています。消費者が価格だけでなく品種や品質、産地背景を重視するようになったことで、1パックあたりの価値が高まり、市場全体の取引金額を下支えしています。さらに、ブランド化や限定商品といった付加価値戦略も取引金額の拡大に寄与しています。この価格の多層化と付加価値化こそが、日本のいちご市場規模を安定的に広げてきた大きな要因のひとつです。
3. いちご生産の現場と市場規模を支える仕組み

日本のいちご市場規模を語るうえで欠かせないのが、生産現場の存在です。市場で安定した取引が行われる背景には、全国各地の産地で築かれてきた生産体制と、品質を維持するための継続的な努力があります。いちごは気象条件や管理方法の影響を受けやすい作物でありながら、年間を通じて一定の供給が求められる果物でもあります。生産量だけでなく「品質の安定」が市場価値に直結するため、生産現場の工夫は市場規模を左右する重要な要素となっています。ここでは、生産の現場がどのように市場規模を支えているのかを詳しく見ていきます。
主要産地の役割と生産体制の特徴
日本のいちご生産は、特定の地域に集中するのではなく、複数の主要産地が全国に点在している点が特徴です。この産地分散型の構造により、天候不順や災害などによるリスクが分散され、一部地域の不作が市場全体に大きな影響を与えにくくなっています。また、各産地は気候や土壌条件に合わせた栽培方法を確立し、独自の品種やブランドを育てながら、市場ニーズに応じたいちごを供給しています。こうした地域ごとの役割分担が、生産量と品質の両面で市場の安定につながっています。
栽培技術の進化と安定供給への貢献
いちごの市場規模を維持するうえで、栽培技術の進化は欠かせません。施設栽培の普及や環境制御技術の向上により、温度・湿度・日照を管理しやすくなり、収穫時期の調整や品質の均一化が可能になりました。これにより、出荷量の急激な変動が抑えられ、流通側は計画的な仕入れを行いやすくなっています。小売や業務用の現場でも安定供給が実現し、結果として市場全体の信頼性が高まっています。生産現場での技術革新は、市場規模を「守る」だけでなく、「広げる」役割も果たしています。
生産者の取り組みが市場価値を高める理由
近年のいちご生産では、単に量を確保するだけでなく、付加価値を高める取り組みが重視されています。品種名の明確化やブランド化、品質基準の統一、栽培背景の情報発信などは、市場での評価を高め、取引価格の安定や向上につながっています。また、高品質ないちごが正当に評価されることで、生産者の収益性が向上し、持続的な生産体制の維持にも結びつきます。こうした生産者の積み重ねが、市場全体の取引金額を押し上げ、日本のいちご市場規模の維持・拡大を支えているのです。
4. いちごの流通ルートを俯瞰する

いちごは、生産された瞬間から「時間との勝負」が始まる果物です。果皮がやわらかく傷みやすい特性を持つため、どのような流通ルートを通るかによって、鮮度や品質、さらには価格まで大きく左右されます。日本のいちご市場が安定した規模を保ってきた背景には、生産者・流通業者・小売が役割を分担しながら築いてきた流通構造があります。ここでは、いちごの流通ルートを全体像として捉え、その仕組みと特徴を詳しく見ていきます。
生産者から消費者へ届く基本的な流通構造
日本におけるいちご流通の基本は、生産者から農協や出荷組織を通じて集荷され、卸売市場へ出荷されるルートです。卸売市場では、等級や規格、品質に基づいて取引が行われ、その後、量販店や青果店、業務用の取引先へと商品が分配されます。この仕組みは、全国各地で生産されるいちごを安定的に都市部へ供給するために欠かせないものです。特に生産量や品質にばらつきが出やすいいちごにとって、一定の基準で流通させるこの構造は、市場全体の信頼性を支える基盤となっています。
卸売市場が担う価格形成と需給調整
卸売市場は、いちご流通の中核として価格形成と需給調整の役割を担っています。複数産地から集まったいちごを比較評価することで、その時期の相場が形成され、市場全体の指標となります。これにより、生産者は市場価格を参考にした出荷判断が可能となり、小売側は品質に見合った仕入れを行うことができます。また、出荷量が多い時期や需要が落ち込む局面では、取引量や価格を調整することで、市場の急激な変動を抑える機能も果たしています。こうした卸売市場の存在が、いちご市場規模の安定につながっています。
市場外流通の拡大と流通構造の進化
近年、いちご流通では卸売市場を介さない市場外流通が着実に広がっています。量販店との直接取引、契約栽培、直売所、産地直送型のEC販売などが代表例です。これらの流通ルートでは、生産者が価格設定や販売戦略に主体的に関わることができ、高付加価値ないちごを消費者に届けやすくなります。一方で、物流コストや鮮度管理、品質保証といった責任も生産者側に求められます。市場流通と市場外流通が併存する現在の構造は、いちご市場に柔軟性と多様性をもたらし、市場規模の広がりを支えています。
5. 卸売市場といちご流通のリアル

日本のいちご流通を語るうえで、卸売市場の存在は今なお欠かせません。近年は市場外流通が広がっているものの、価格形成や需給調整、品質評価の面では卸売市場が果たす役割は大きく、市場全体の「基準点」として機能しています。いちごは天候や需要の影響を受けやすい果物だからこそ、卸売市場を通じた流通の仕組みが市場規模の安定に寄与してきました。ここでは、卸売市場の現場から見たいちご流通の実態を掘り下げていきます。
卸売市場はいちご流通の中で何をしているのか
卸売市場は、生産者と小売・業務用の取引先をつなぐ中継点であると同時に、品質と価格を評価する場でもあります。いちごは等級や規格、見た目、鮮度などによって評価が大きく変わるため、市場での選別と取引は非常に重要です。複数産地から集まったいちごを同じ基準で比較することで、需給バランスに応じた取引が成立します。この仕組みがあることで、特定の産地や流通先に偏らない安定した流通が実現しています。
価格形成の現場から見える市場の動き
卸売市場で形成されるいちごの価格は、その日の出荷量、品質、需要状況を反映した結果です。需要が高まる時期には価格が上昇し、供給が多い時期には落ち着くなど、市場は常に動いています。重要なのは、こうした価格情報が市場全体に共有される点です。生産者は出荷時期や量の調整に役立て、小売側は販売計画を立てやすくなります。卸売市場は、いちご市場全体の「情報の集積地」としても機能しているのです。
市場流通が持つ信頼性と今後の役割
卸売市場を通じたいちご流通は、品質や取引の透明性という点で高い信頼性を持っています。生産者にとっては販路の安定につながり、小売側にとっては一定水準の品質を確保しやすいというメリットがあります。一方で、流通の多様化が進む中で、卸売市場には柔軟な対応も求められています。市場流通と市場外流通を適切に使い分けることで、いちご市場全体の規模と安定性を保つ役割は、今後も続いていくでしょう。
6. 市場外流通が広げたいちごの販路

いちごの流通は、これまで卸売市場を中心に発展してきましたが、近年では市場を介さない「市場外流通」の存在感が急速に高まっています。量販店の仕入れ方法や消費者の購買行動が変化する中で、いちごはより多様な形で消費者に届けられるようになりました。市場外流通は、生産者にとって新たな販路となるだけでなく、価格設定や販売戦略に主体的に関われる点でも注目されています。結果として、従来の市場流通では拾いきれなかった価値が可視化され、市場全体の規模や構造にも影響を与えています。ここでは、市場外流通がいちご市場にもたらした変化を整理していきます。
量販店・契約取引が支える新しい流通の形
市場外流通の代表例が、量販店との直接取引や契約栽培です。これらの流通では、あらかじめ数量や価格、品質基準を取り決めたうえで取引が行われるため、需要と供給のズレが生じにくく、安定した供給と販売が可能になります。生産者にとっては価格変動のリスクを抑えやすく、設備投資や人員配置を含めた計画的な生産につなげやすい点が大きなメリットです。一方、量販店側にとっても、一定品質の商品を継続的に確保できることで、売場づくりや販売戦略を立てやすくなります。このような契約型流通は、効率性と安定性の両面から、いちご市場を支える重要な仕組みとなっています。
直売所・産地直送がもたらす付加価値
直売所や産地直送は、生産者と消費者の距離を大きく縮める市場外流通の形です。これらの流通では、生産者が自ら価格を設定し、栽培方法や品種の特徴、旬の時期などを直接伝えることができます。その結果、単なる価格比較ではなく、「誰がどのように育てたか」という背景に価値を感じて商品を選ぶ消費者が増えています。また、規格外品や少量生産のいちごも販売しやすくなるため、廃棄ロスの削減や収益機会の拡大にもつながります。直売型流通は、市場規模を量だけでなく「価値」で広げる役割を担っています。
EC化と市場外流通が市場規模に与える影響
近年は、ECを活用したいちごの販売も着実に広がっています。オンライン販売では、地域を越えて消費者に届けることができ、従来の流通では接点を持ちにくかった層にもアプローチが可能です。一方で、鮮度管理や配送コスト、品質保証といった課題も避けては通れません。そのため、生産者や流通業者は、温度管理を考慮した梱包や配送方法の工夫を重ねています。市場外流通とECの拡大は、販路の多様化を通じて、いちご市場全体の取引金額を底上げする要因となっています。
7. いちご価格はどう決まるのか

いちごは、同じ果物でありながら価格帯に大きな幅がある品目として知られています。スーパーで手頃に購入できるものから、贈答用として高価格で取引されるものまで、その差は一目瞭然です。この価格差は単なる「高い・安い」ではなく、生産・流通・需要の条件が複雑に重なり合った結果として生まれています。いちご市場を正しく理解するためには、価格がどのような要素によって決まっているのかを知ることが欠かせません。
品種・等級・品質が価格に与える影響
いちごの価格を左右する最も基本的な要素が、品種と等級、そして品質です。粒の大きさ、色づき、形のそろい方、傷の有無などは市場評価に直結し、同じ産地・同じ品種であっても価格差が生じます。また、近年は品種名が明確に表示されるケースが増え、消費者が味や特徴を理解したうえで選ぶようになっています。こうした品種価値の可視化は、高品質ないちごが正当に評価される土壌をつくり、市場全体の価格構造を多層化させています。
出荷時期と需要の波が生む価格変動
いちごの価格は、出荷時期と需要の動きに大きく影響されます。特に年末年始やクリスマス、バレンタインといった需要期には、取引が活発化し価格も上昇しやすくなります。一方で、出荷量が増える時期には価格が落ち着く傾向も見られます。卸売市場では、こうした需給バランスを反映しながら日々価格が形成されており、その情報が生産者や小売に共有されます。需要の山と谷がはっきりしている点は、いちご価格の大きな特徴です。
流通コストと付加価値が価格に反映される仕組み
いちごの価格には、流通コストも大きく影響しています。鮮度を保つための予冷や温度管理、丁寧な梱包、迅速な配送体制は欠かせず、それらにかかるコストは最終的な価格に反映されます。また、ブランド化や贈答用パッケージ、産地のストーリー性など、付加価値が加わることで価格はさらに高まります。こうした要素は単なる「高級化」ではなく、市場全体の取引金額を押し上げ、いちご市場規模を支える重要な要因となっています。
8. 業務用・加工用いちごが支える市場規模

いちご市場というと、生食用の華やかなイメージが先行しがちですが、実際には業務用・加工用いちごの存在が市場規模を下支えしています。ケーキやデザート、飲料、冷菓など、さまざまな商品に使われるいちごは、季節を問わず安定した需要があります。生食用が消費者の嗜好や価格動向の影響を受けやすい一方で、業務用・加工用はいちご市場の「土台」として機能してきました。生食用とは異なる基準や流通構造を持つこれらの用途は、市場全体のバランスを保つうえで欠かせない役割を果たしています。
製菓・外食産業が生み出す安定需要
業務用いちごの最大の需要先は、製菓業界や外食産業です。ケーキやタルト、パフェ、いちごを使った季節限定メニューなど、いちごは定番素材として幅広く利用されています。特にクリスマスやバレンタイン、春のイベントシーズンには需要が集中し、安定した取引が行われます。これらの現場では、見た目の美しさだけでなく、味の安定性や糖度、加工時の扱いやすさが重視されます。そのため、業務用として適した品種や規格が確立され、一定量を継続的に確保できる体制が整えられています。こうした継続的かつ計画的な需要が、いちご市場全体の取引量と取引金額を下支えしています。
加工用いちごの流通と市場での役割
加工用いちごは、ジャムや冷凍果実、ピューレ、飲料原料、製菓原料など、幅広い用途で利用されています。形や大きさが不揃いであっても品質に問題がなければ活用できるため、生食用では流通しにくい規格外品の受け皿として重要な役割を果たしています。これにより、収穫されたいちごを無駄なく市場に流通させることが可能になります。また、冷凍や加工という形で保存性を高めることで、年間を通じた安定供給が実現し、市場の需給バランスを整える役割も担っています。加工用いちごの存在は、廃棄ロスを抑えながら市場規模を維持・安定させるという点で、極めて現実的かつ重要な役割を果たしています。
生食用と業務用が共存する市場構造
日本のいちご市場の大きな特徴は、生食用と業務用・加工用が明確に分かれつつも、相互に補完し合っている点にあります。生食用は高付加価値化やブランド化によって取引金額を押し上げ、業務用・加工用はいちご全体の流通量と需要の安定を担っています。天候不順や需要変動が起きた場合でも、用途の異なる需要先が存在することで、市場全体への影響を緩和することができます。この複層的な市場構造こそが、日本のいちご市場規模を長期的に支えてきた要因と言えるでしょう。業務用・加工用いちごは目立たない存在でありながら、市場の根幹を支える欠かせない存在なのです。
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9. いちご市場が直面する課題と変化

いちご市場は、これまで安定した規模を維持してきましたが、その裏側ではさまざまな課題と変化が同時に進行しています。生産・流通・消費の各段階で環境が大きく変わりつつあり、従来のやり方だけでは対応が難しくなっている場面も少なくありません。一方で、こうした課題は市場構造を見直し、より持続可能な形へ進化するための契機ともなっています。いちごは付加価値を生み出しやすい果物であるからこそ、変化への対応力が市場規模の将来を左右します。ここでは、現在のいちご市場が直面している主な課題と、その変化について整理します。
生産現場が抱えるコストと人手の問題
いちご生産の現場では、資材費やエネルギーコストの上昇、人手不足といった課題が顕在化しています。施設栽培が主流であるいちごは、暖房や電力などのコスト負担が大きく、経営を圧迫する要因となっています。加えて、苗の確保や資材価格の変動も、生産計画に影響を及ぼします。また、収穫や選果には人の手が欠かせず、繁忙期に十分な労働力を確保できない地域も増えています。こうした状況は、生産量の安定や出荷計画の精度に影響し、市場規模の維持にとって無視できない問題となっています。そのため、省力化技術の導入や作業の効率化、労働環境の改善が、今後の生産現場にとって重要なテーマとなっています。
物流・流通を取り巻く環境の変化
流通面でも、いちご市場は大きな転換期を迎えています。物流コストの上昇や配送人員の不足により、従来どおりの輸送体制を維持することが難しくなってきました。いちごは鮮度管理が重要な果物であるため、輸送の遅れやコスト増は、最終的な価格や品質に直結します。そのため、流通業者や生産者は、配送ルートの見直しや共同輸送、出荷単位の最適化など、さまざまな工夫を重ねています。また、市場外流通やECの拡大に伴い、個別配送や小口配送への対応も求められるようになっています。流通の在り方そのものが、市場規模や取引金額を左右する要因になりつつあります。
消費行動の変化が市場に与える影響
消費者の価値観や購買行動の変化も、いちご市場に大きな影響を与えています。価格重視から品質・ストーリー重視へと意識が移り、産地や品種、栽培方法に注目する人が増えています。一方で、家庭での果物消費量は横ばい傾向にあり、従来型の販売方法だけでは需要を大きく伸ばしにくい状況です。そのため、市場では贈答需要や体験型消費、加工品との組み合わせなど、新たな価値提案が模索されています。消費者の変化を的確に捉え、価値をわかりやすく伝えられるかどうかが、今後のいちご市場規模の行方を左右する重要なポイントとなっています。
10. いちご市場と流通のこれから

日本のいちご市場は、長年にわたり安定した規模を維持してきましたが、今後はこれまで以上に「変化への対応力」が問われる時代に入っています。生産現場の環境変化、流通構造の多様化、消費者意識の変化が同時に進む中で、市場と流通は新たな役割を担い始めています。いちごは単なる果物ではなく、価値を設計し、届け方を工夫することで市場を成長させられる存在です。これまで築かれてきた生産・流通の仕組みを土台としながら、どのように進化していくかが、今後の市場規模を左右します。ここでは、これからのいちご市場と流通の方向性を整理していきます。
高付加価値化とブランド戦略の重要性
今後のいちご市場では、単に生産量を増やすだけでなく、高付加価値化がより重要になります。品種の特性を明確に打ち出し、味や品質、栽培背景を丁寧に伝えることで、消費者は価格に納得して購入するようになります。すでに産地ブランドや生産者ブランドに注目が集まっているように、「どこで、誰が、どのように育てたか」という情報は、市場での評価を左右する要素となっています。こうしたブランド戦略は、価格競争に陥りにくい市場構造をつくり、市場全体の取引金額を押し上げる効果も期待できます。いちご市場を「量の市場」から「価値の市場」へと進化させるうえで、欠かせない視点と言えるでしょう。
流通の柔軟化とデジタル活用の広がり
流通の分野では、従来の卸売市場中心の構造に加え、市場外流通やEC、直送モデルが今後も拡大していくと考えられます。デジタル技術を活用した受発注管理や需要予測は、無駄のない流通を実現し、鮮度保持やコスト削減にもつながります。さらに、流通過程の可視化が進むことで、品質管理やトレーサビリティの面でも信頼性が高まります。生産者と消費者が直接つながる機会が増えることで、ニーズを迅速に把握し、商品開発や出荷計画に反映させることも可能になります。流通の柔軟化とデジタル活用は、市場の安定と拡大を同時に支える重要な要素となっていくでしょう。
消費者が市場と流通を支える存在になる
これからのいちご市場において、消費者は単なる「買い手」ではなく、市場と流通を支える重要な存在になります。どのいちごを選び、どの価値にお金を払うかという選択が、生産や流通の方向性に影響を与えるからです。生産者や流通業者が丁寧に価値を伝え、消費者がそれを理解したうえで選ぶ。この循環が生まれることで、市場はより健全で持続可能な形へと進化していきます。消費者の選択が市場を育てるという意識が広がることは、いちご市場全体の信頼性や将来性を高めることにもつながります。市場と流通の未来は、生産者・流通業者・消費者がそれぞれの立場で関わり合う関係性の中で築かれていくのです。
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